Question  妊娠中の運動はどのようにしたらよいでしょうか?  Cat

Answer  お産は英語でLABOR(労働)といい、一種の労働ととらえると、分娩(ぶんべん)は体力や身体機能を最大限に発揮しなければならない持久的全身運動といえます。そのためにも気力、体力を充実させておくことが必要で、日ごろからの運動が不可欠に。お産にも準備運動が必要というわけです。

ところが、最近は家電製品や自動車の普及などにより、多くの人が慢性的な運動不足に陥っています。さらに、飽食、冷暖房など快適さへの追求が、妊婦においても運動不足と栄養のとりすぎによる身体諸機能の低下をもたらしています。

この運動不足を改善するために、最近では余暇を利用して運動する人が増加。妊娠中も同様ですが、妊婦ゆえに注意しかければならない点もあります。母体面では子宮収縮誘発による流産・早産の危険性、胎児面では胎児低酸素状態による胎児発育への影響。これらは正常妊娠では全く問題ありませんが、妊娠中毒症、切迫流早産、胎盤機能不全、子宮内胎児発育不全などのハイリスク妊娠では影響が大きく、注意が必要です。

運動強度の程度は明確でなく、今後の課題ではありますが、文献的には非妊時のスポーツより30% 程度抑えた方が安全であると報告されています。危険を避けるためにも主治医の判断を仰ぎ、熟練した実技指導社の指導を受けるとともに、開始と終了時のメディカルチェックが必要です。

妊娠には明確な期限や目標があり、運動の動機づけに最適で、妊娠前にスポーツをしなかった妊婦でも運動習慣を身につけることができ、妊娠中の肥満を防止することができます。さらに精神面での自信と安定が得られ、ストレス発散、爽快感を得ることにも。マタニティーブルーの予防に効果があるとの報告もあります。

次に、、具体的な運動方法について紹介しましょう。

最も手軽な運動は歩くこと。ただし、妊婦の身体はアンバランスなので、良いマタニティーシューズ(ヒールが3cm以下、柔らかくてクッションのあるもの)を使うことをお勧めします。日ごろからトレーニングを積んでいる人は、ジョギングやランニングもよく、マタニティー・ヨーガを勧める人も。水泳、エアロビック・ダンス、サイクリングも好んで行われています。

激しい運動の前には5分間の筋肉のウオームアップを行い、終了後は緩やかな静的ストレッチを含むクールダウンを続けること。また、ショックを和らげるために木の床かじゅうたんの上で行い、規則的に続けるようにしましょう(少なくとも週3回)。

運動歴のない人は非常に低い強度の運動から始め、徐々に増加させます。運動前後や途中で脱水による体温上昇を防止するため、積極的に水分の補充を。母体心拍数は140拍/分を超えないこと。激しい運動は15分以内にします。起立性低血圧を防ぐには、床から徐々に起き上がるように。足を使う運動のいくつかは短期間にとどめます。

妊婦水泳は体重の重い妊婦でも楽々と体を動かせ、ひざなどへの負担がないこと、他の運動と異なって水平位で行うため妊娠に多い下半身のうっ血がとれやすく、温水中であるので子宮収縮がおきにくいなど数々の利点があります。分娩所要時間も水泳をしていない人より短くなっています。 不適当な運動は、衝撃を伴うもの、勝敗をかけた競技、弾みをつける運動など。関節の不安定さから、跳びはねたり、急速に方向を転換する運動は避けます。また、暑くて湿度の高い気候のときや発熱時には、激しい運動はやめましょう。