Question  現在、妊娠8カ月です。今ごろ聞くのも恥ずかしいのですが、“腹帯”はどうしても着けなければならないものでしょうか? また、選び方のポイントはありますか?  Cat

Answer  腹帯については、歴史的なお話からしないとわかりずらいとおもわれます。腹帯を最初に使ったといわれるのは三韓を征するために出陣した神功皇后で、妊娠後期であったため鎧が合わず、石を挟んだ帯を結んで出陣し、無事に凱旋し、応神天皇が誕生したといい、腹帯を鎮帯と呼ぶようになりました。

その後平安時代には腹帯は岩田帯とも斎肌帯(いはだおび)とも書き、斎肌帯のそのものの始まりは絞り染めの絹が使われていたのであろうといわれます。いま腹帯に使われる布は8尺の綿布ですが、平安時代は1丈2尺の生絹でした。もちろんそのようなりっぱな腹帯をつけるのは上流階級のみでした。

しかし、江戸時代になって、庶民の間で腹帯の習慣が広まったとき、生絹に代わって白綾が使われるようになりました。斎肌帯の斎は忌みの意味で、妊娠5ヶ月から忌みに入ることを自覚させるために締める帯、また岩田帯とは岩のように丈夫な子供を産むための帯と考えられていました。さらに腹帯を締める祝を帯祝と呼び、妊娠したことを正式に社会へ披露する意味があり、このときの祝宴に親類縁者が招かれましたが、それは胎児にとって生存権を認めた最初の儀礼であり、無事に出産の日を迎える約束でもありました。江戸時代の腹帯は腹部全体を包むのではなく、まさに腹部を縛るものでした。もし腹帯をしなければ、「子は太り、胎内での居ずまいが悪くなり、難産になる」、腹帯は産後も使われ「万一命がなくなったときは、帯の締め方が緩かったからだ」と信じられていました。したがって、妊婦は極度の苦痛をがまんして腹部を産婆によって強く縛り上げられていましたが、これではたまったものではありません。そこで強く締める腹帯が批判されましたが、出産にまつわる不測の事態があまりにも多く、「腹帯をしないで万一難産になったり、産後に死亡したりするのではないか」といった不安が強いために腹帯廃止には至らず、ゆるく腹部全体を締める着帯法が定着し、現在に続いています。

現在では安産の守護神をまつっている神社で安産祈願した腹帯をもらい用いている方が多いようですが、おそらくそれが安産につながるとは本気で思っていないかもしれません。医学的には腹帯は単なる下着の一種と考えて、差し支えありません。妊婦さんが不快でなければ、どのような素材や形でも、あるいは腹帯をしなくても全く問題ありません。おたずねの方の好みのものを選ばれればよいと思います。

参考文献 酒井シヅ 腹帯(いわた帯・鎮帯) 日母医報 平成9年8月1日

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