Question  中絶後は子供を産めないからだになることもあると聞きますが、そのような心配のない方法や中絶に適した時期はあるのでしょうか?  Cat

Answer  人工妊娠中絶術は、胎児が母体外において、生命を維持することができない時期に、人工的に胎児およびその付属物を母体外に排出する手術のことをいいます。

現在日本では妊娠22週未満(6ヶ月半ば以前)の人工妊娠中絶手術が認められています。妊娠週数は、最後にあった月経の第1日目から数えます。したがって月経がないと気がついた時には、すでに4週となっているわけです。日本における人工妊娠中絶実施数は、家族計画や各種避妊法の普及に伴い昭和30年の117万件の約6分の1と減少傾向を示しており、2014年度では総数20万件弱となっています。そのうち妊娠初期(3ヶ月、11週以前)が約95%、妊娠中期(4ヶ月、12週以後)が約5%となっています。年代別にみると20歳以後の人工妊娠中絶実施率は減少傾向がありますが、20歳未満では増加傾向となっています。20歳未満では妊娠成立のメカニズムや各種避妊法に対する認識が乏しいまま妊娠し、その結果として中絶の増加傾向を示しているものと思われます。また、予期しない妊娠のため初診時期の遅れの傾向が高く、このことは中期中絶率の増加へとつながっており、今後の家族計画、各種避妊法の指導が重要となってきています。

人工妊娠中絶術は母体保護法という法律によって実施されますが、本人と胎児の父親の同意が必要で、同意書という書類に署名、捺印をします。手術は母体保護法指定医という資格をもった医師が行います。おたずねの「中絶後は子供を産めないからだになることもある」といったことは起こりませんが、まえに述べた妊娠中期(4ヶ月、12週以後)の手術より妊娠初期(3ヶ月、11週以前)の手術の方が母体に対するリスクは少ないのは当然です。また、人工妊娠中絶術が22週未満まで可能といっても、時間がたつにつれ胎児は成長していき、それによって費用もかさみます。したがって、手術をする場合はできるだけ早い時期にすることが望まれます。ただし、極端に早い時期では、経膣超音波断層法で妊娠しているふくろが見えないため子宮外妊娠か子宮内妊娠か診断できないことや、手術を行っても出てきたものの内容の確認が困難なため、それらがはっきりとする妊娠5~6週まで待った方がよいケースもあります。通常、妊娠初期では特殊なケースを除いて入院は必要ではなく外来で、吸引や掻爬によって子宮内容を取り出すのですが、妊娠中期では数日間入院して人工的な陣痛をおこして分娩と同じように娩出させるといった方法となります。

以上人工妊娠中絶術についてお話しましたが、妊娠に関してはお2人で話し合いの上、きちんとした家族計画をたてておくことが重要で、その時期まではぜひ確実な避妊を実行して下さい。