Question  今妊娠6ヶ月なのですが、貧血があると言われています。どうしたらよいのでしょうか?  Cat

Answer  妊娠合併症の中で貧血症は頻度の多いものです。貧血症の種類はは鉄欠乏性貧血、悪性貧血、再生不良性貧血、溶血性貧血などいろいろありますが、妊娠中の貧血の90%以上は鉄欠乏性貧血です。現代の若い女性は日頃から、ダイエットなどで食事制限をしている方が多く、妊娠される前から鉄、カルシウム、ビタミンの摂取量が少ない状態にあります。そこで妊娠によって鉄の必要量が増大しても体内の貯蔵鉄では足りなくなり、鉄欠乏性貧血が発症することになります。

日本産科婦人科学会では妊婦にみられる貧血を妊婦貧血と総称しこれを妊娠性貧血と母体合併疾患としての各種貧血に区分しています。そのうち鉄欠乏が確認されるものを妊娠性鉄欠乏性貧血と呼んでいます。妊婦さんの約30%にこの妊娠性鉄欠乏性貧血が認められています。

診断は血液検査で簡単にわかります。妊婦貧血によって母体、胎児に与える影響としては低体重出生児の頻度が高くなるとの報告もあります。実際に妊娠によって母体の血液量は1500ml増加し、また胎児や胎盤、臍帯中の血液も加えると妊娠時の全鉄必要量は980mgにもなります。さらに分娩時の出血で150mgも鉄分は失われます。そうすると現在たとえ赤血球数やヘモグロビン値などが正常でも、妊娠をふまえて考えれば潜在的な鉄欠乏状態ともいえます。

治療は日頃からの食生活が重要です。なるべく鉄分の多い食品を選ぶのが原則です。とくに腸管での吸収率は動物性の鉄分が最もよく、また鉄含有量の多い動物性食品をとることはアミノ酸を摂取することにもなり、ヘモグロビンなどのたんぱく部分の原料ともなります。しかしながら、食生活の上では単に鉄含有量の多い食品を選ぶのではなく、全体の食品構成と総カロリー量が重要となります。とくに現在では妊婦さんのカロリー不足が問題となることはまずなく、むしろカロリー過多による肥満が問題になっています。したがって、蛋白質のほかにビタミンC、B2、B6、B12、葉酸、銅なども造血に必須であるので、これらの栄養素を多量に含む緑黄色野菜を中心として適量の動物性食品を加え、総カロリー量を抑えたバランスの良い食事をとることが望まれます。

また産婦人科では妊娠性鉄欠乏性貧血の方に対しては食事指導もしていますが、必要な方には鉄剤を処方しています。鉄剤は服用により、便の色が黒くなりますが、服用のための当然の結果なのでご心配は不要です。さらにお茶やコーヒーなどと同時に飲むことによって吸収されにくくなりますので、そういったものを飲む時間帯を避けて服用する必要があります。