Question  今妊娠7ヶ月です。赤ちゃんの性別が知りたいのですが、どれ位はっきりと分かるものなのですか? 通っている病院では聞いても「うーん、、、今日ははっきりと見えないねー」と言われました。  Cat

Answer  妊婦さんの中には胎児の性別を妊娠中に知りたいと希望される方がおられます。胎児の性別を診断する方法としては以下の2つあります。

(1) 胎児の染色体異常を知るために羊水検査といって子宮内の胎児の細胞が浮かんでいる羊水をとって、検査することがあります。その際胎児の46本の染色体のうち2本の性染色体がどうなっているか副次的に分かります。XYであれば男児、XXであれば女児となります。しかし、この羊水検査は胎児の染色体異常を妊娠中に調べる検査なので、胎児の性別を診断する目的では行われません。もちろん高年妊娠の方などのごく一部に行われている検査です。

(2) 近年超音波検査法が進歩し、超音波によって様々な胎児の情報が得られるようになりました。その超音波検査法の中で妊娠中に子宮内の胎児の像をディスプレイ上に描き出す方法があります。その胎児の像のうちで骨盤腔内、骨盤底、骨盤底外の外性器などの像を詳細に検討することによってある程度の性別判定が可能です。これは骨盤腔内では直腸と膀胱の間に子宮があるかどうか(もちろん子宮があれば女児、なければ男児)、骨盤底の形状では男児は数珠状、女児では木の葉状の形をしているとか、骨盤底外では陰茎と陰嚢があれば男児(睾丸は妊娠28週を過ぎるまでは陰嚢内ではなく鼠径管内にあります)、大陰唇があれば女児であろうと判定されます。しかし、胎児は子宮内で様々な向きでいますので、全例必ずしも性別判定が分かりやすい状態とは言えません。すなわち胎児の向き、羊水量、妊婦さんの体型、超音波診断装置自体の問題などから多くの例では性別を診断できることもありますが、困難なケースもあり得ます。本来超音波検査法は胎児の性別を判定するためではなく、胎児や母体の異常状態を早期に診断するためや、元気な新生児の出生や母体の安全を保つために行われている検査です。

もちろん検査する医師のコンセプトとして胎児の性別は仮に診断できても妊婦さんにはお教えしないといった方もおられますし、所見の確実性がどの程度で実際に患者さんに胎児の性別診断結果をお話するかも医師それぞれによって異なります。また、以下のことはあり得ないこととは思いますし可能性として話ですが、現実には母体保護法では妊娠22週未満は人工妊娠中絶術も不可能ではありません。万が一妊娠早期に胎児の性別診断をお知らせしたことによって人工妊娠中絶術を選択されることがあり得るとしたら、非常に大きな問題となります。

胎児の性別自体は妊婦さんやご家族にとって強い興味がある事柄ではありますが、性別自体は分娩直後に直接ご自分やご家族でご覧になれます。もちろん妊娠中に胎児の性別診断を正確に行えることの意義はあると思いますが、産婦人科医療としては胎児の性別診断以前にもっと基本的な「より多くの方々のより健全な母子環境をいかにつくりだすか」といった視点が必要と考えます。