Mawaru 膣炎の話

膣粘膜が炎症をおこしたものを膣炎といいますが、膣炎は大きく分けて(1)カンジダ膣炎、(2)トリコモナス膣炎、(3)非特異性膣炎、(4)萎縮性膣炎の4つがあります。このそれぞれについてお話いたします。

(1) カンジダ膣炎

カンジダ膣炎は女性の4人に3人は一生のうち少なくとも1回は発症すると言われており、産婦人科領域では非常にポピュラーな疾患です。

症状は感染の程度によって異なりますが、最も一般的なものは膣部の強い掻痒感、無臭の白い酒粕状の帯下、強い発赤を伴う膣周辺部の変化、外陰部の腫脹、性交時や排尿後の疼痛、灼熱感です。

原因はカンジダ菌と呼ばれている真菌が膣内に進入し異常増殖することによって発症します。その原因となるカンジダ菌には4種類ありますが、カンジダ膣炎の約80%はカンジダ・アルビカンスと呼ばれる菌が原因となっています。このカンジダ菌は健康な状態でも膣、口腔、消化管内に少数常在していますが、通常は無害です。しかし、膣の中には乳白色の帯下があり、その中には正常の微生物がいてバランスを保って、病的な状態にならないようにコントロールされています。しかし、何らかの原因でその微生物叢のバランスが崩れると、カンジダ菌が異常増殖してカンジダ膣炎となります。膣内環境のバランスを崩してカンジダ膣炎が発現する要因としては、妊娠、月経、抗生物質の服用、肥満、糖尿病などがあります。また体力の消耗や休養の不足、病気などによって免疫力が低下しても発症します。さらに、カンジダ膣炎の他の原因としては、保湿性と保温性のある衣類(ナイロンなど)の着用、糖質、デンプン類、酵母を含んだ食物の過剰摂取などもあります。男性のパートナーから性生活によって感染するケースも有り得ますが、その可能性はきわめてわずかです。

診断は膣分泌物をとり、顕微鏡でカンジダ菌が異常増殖していることをみることによって簡単に診断されます。

治療は抗真菌剤の膣坐薬が一般的です。この膣坐薬を5~7日間膣内に挿入することによって治療します。カンジダ膣炎と同時にカンジダ外陰炎も併発していることが多いため、抗真菌剤の塗布薬も同時に投与することがあります。

カンジダ膣炎の治癒率は80~95%と高いのですが、再発の頻度も高いので注意しましょう。再発の原因のひとつに初回感染時の不完全な治療があります。薬の使用を中断することによって菌が再び増殖します。

カンジダ膣炎の予防のために以下のことを守りましょう。

①外陰部を石鹸で毎日清潔に保ち、入浴、シャワー、水泳の後はすぐに完全に乾かす。

②下着は綿製品にして、通気性を保つ。濡れた下着や湿った衣類は出来る限り早く着替える。

③女性用消臭スプレーや脱臭効果のあるタンポンは使用しない。

④身体に密着した衣類はなるべく避け、ストッキング、タイツなどは長時間身につけない。

⑤炭水化物の摂取は少な目にし、菓子類、アルコール、カフェイン飲料を控えめにする。

(2) トリコモナス膣炎

トリコモナス膣炎とはトリコモナス原虫という病原体が膣の中に入り、炎症を起した状態です。

トリコモナス原虫とは血液中の白血球と同じか、やや大きい程度で梨状または紡錘状で鞭毛と波動膜とよばれる膜を動かして活発に運動するものです。

おりものを訴えて来られる方の原因の上位を占めており、産婦人科の中でも多い疾患です。黄色のおりものが増えて、膣や外陰部にかゆみを伴い、焼けるような灼熱感を感じることもあり、また炎症が尿道まで広がると排尿痛も伴うことになり、膣や尿道の粘膜が赤くなります。膣内の分泌物をとり、顕微鏡で見て、トリコモナス原虫の有無によって診断されます。このトリコモナス原虫は膣内だけでなく、子宮頚管内、バルトリン腺内、尿道および膀胱内にも感染していることがありトリコモナス膣炎と言うよりトリコモナス症の一部としてトリコモナス膣炎と考えるべきものです。このトリコモナス原虫による膣の炎症が起きるとそれ以外の細菌による混合感染を起していることが多く、膣内の清浄度は悪化していることが多いものです。さらに配偶者の性器にも存在するために再発を繰り返しやすいのが特徴です。したがってご夫婦同時に治療する必要があります。

治療はトリコモナス原虫に対する膣錠の挿入と内服薬の併用が行われます。約10日間膣内に膣錠を1個ずつ挿入し、内服薬を服用します。この薬にはアルコールを摂取すると血中のアルデヒドの濃度が上昇することがあるため、飲酒を制限することがあります。治療開始から2週間後にもう一度膣内の分泌物を顕微鏡で見て、トリコモナス原虫がいないことを確認して、治療終了となります。

治療後は膣内分泌物にトリコモナス原虫が発見できない状態になることは期待でき一旦は治癒状態になるのですが、再発や再感染を繰り返すことが多くそういった意味では難治性ともいえます。

(3) 非特異性膣炎

膣粘膜の発赤、掻痒感、痛みなどがあり、膣炎ではあるものの、カンジダやトリコモナス原虫といった特殊な病原体が発見できず、分泌物検査で白血球が増加しており、一般雑菌(球菌)が増加しているものを言います。

正常の女性の膣内の分泌物は膣内にある時は通常乳白色で、下着に付着して時間が経つとやや黄色みを帯びた状態となります。正常な膣粘膜上皮には大量のグリコーゲンが含まれていて、これが剥脱すると融解しグリコーゲンは単糖類となります。膣内にいる乳酸桿菌と呼ばれる細菌が単糖類を乳酸に変化させて、膣内容を高い酸度に保ち、外からの病原体の進入に対して防御するといった自浄作用を営んでいます。

この乳酸桿菌がたくさん認められれば腟内の清浄度は高いということになります。しかし、この乳酸桿菌が減少し、ブドウ球菌、大腸菌、連鎖球菌などの雑菌が増えてくると腟内の酸性度は低下し、ますます雑菌が繁殖しやすい環境となります。一般的にはにおいのあるおりものが多くなり、自覚的にも違和感、かゆみ、痛みなどを自覚されることになります。

治療は抗生剤の腟坐薬が使われます。

(4) 萎縮性膣炎

エストロジェン分泌の盛んな時期の女性の膣粘膜は妊娠、分娩しやすいように膣粘膜も厚く、やわらかく、伸びやすくなっています。ところが更年期以後の女性では卵巣から分泌される女性ホルモンであるエストロジェンが低下しているため、膣粘膜が薄く、充血した状態になり、痛みや出血の原因となっているもので、不正出血や性交痛で来院されることが多いものです。

また、出産後に月経が再開するまでの間は月経がおこらないほどエストロジェンが低下しています。これは乳汁分泌をおこすためにプロラクチンというホルモンが分泌されているためにおこります。産後月経が開始するまではエストロジェンレベルは前述の閉経以後の状態にありますので、一時的ではありますが萎縮性膣炎の状況といえ、性交痛の原因となることがあります。もちろん月経が再開すれば萎縮性膣炎の状況は改善されることになります。

治療はエストロジェン製剤の腟坐薬を投与したり、経口的に内服薬を服用したり、貼り薬の形で貼ったりします。また萎縮性膣炎の状態の時には腟内分泌物も極めて減少した状態にあるので、性交痛に対しては性交時に使用するゼリーを投与することもあります。

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