Question  2人目の子供を妊娠中です。前回はほとんどなかった「つわり」が、今回は1ヶ月半続きました。7ヶ月の今でも時々ひどい胸ヤケにおそわれるのですが...  Cat

Answer  男性や妊娠経験のない方が決して理解できない女性の苦しみ、不快感に、「つわり」「陣痛」「更年期障害」があります。そのうち、「つわり」は全妊婦の50~90%の妊娠初期~妊娠4ヶ月にみられる悪心、嘔吐、食欲不振などの消化器症状で、これは病気の範疇に入れません。「つわり」症状が悪化して食事摂取が困難となり、妊婦に栄養障害や代謝障害をきたし加療を要する状態になったものを「妊娠悪阻」といい、病気の範疇に入れています。すなわち、多くの妊婦さんは妊娠の初期にムカムカしますが、これは正常妊娠の範囲内の「つわり」です。しかし、「つわり」がひどくなって悪化すると「妊娠悪阻」と呼ばれ病的な状態とされますが、「つわり」がどこまで悪化したら「妊娠悪阻」とするか明確な定義はありません。

「妊娠悪阻」は経産婦より初産婦が多いとされ、「妊娠悪阻」の既往のある妊婦では再発率は高い。胞状奇胎、多胎妊娠例、甲状腺機能亢進症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃液分泌低下、甲状腺機能亢進などを認める婦人では発生頻度も高くなり、その症状も増大します。「つわり」、「妊娠悪阻」の発生機序は未だ定かではありません。かつては妊娠初期の妊娠中毒症ではないかとも考えられた時期もありましたが、現在では妊娠中毒症とは直接関係はないと考えられています。また、夫婦、家族間の問題、妊娠や分娩への不安など、患者の背景にある心因性の要素も本症を誘因、増悪させることになります。悪臭がする、換気が悪い、高温多湿などの環境下に妊婦がおかれると、「つわり」症状の増悪から「妊娠悪阻」に移行することも多いものです。

症状は悪心、嘔吐、食欲不振などの消化器症状以外に、流涎(よだれ)、不眠、心悸亢進、嗅覚・聴覚・視覚の感受性亢進のような症状を伴うこともあります。

もちろん、悪心、嘔吐の原因となる他の疾患との鑑別は必要です。

バランスのとれた食事をしなければならないと思い込み、または周囲の人に薦められ、そのために食べたくないものを無理して食べ、余計に「つわり」を悪化させる場合があるので注意が必要です。「つわり」の時期は自分の食べたいもの、食べられるものだけを食べていればよいのです。ジュースなど水分だけでも結構です。また空腹になると嘔気が強くなるので、少量を小刻みに食べるようにしましょう。ご主人、ご家族の理解が重要で、周囲の温かい心遣いだけでもかなりの改善が見られるケースが多いものです。

症状が強くなり「妊娠悪阻」となれば、体重減少もひどくなり、脱水、皮膚乾燥、飢餓状態となり、外来通院点滴を必要とすることもあります。さらに重症となれば入院安静、妊娠に対する不安を取り除く、家族の葛藤など妊婦をとりまく生活環境の改善、カウンセリング、心理療法、高カロリー輸液を必要とし、さらにひどくなれば最終的に人工妊娠中絶術も選択される場合も有り得ますがが、なるべくさけたいものです。

胸ヤケは子宮がおおきくなれば、胃腸を圧迫することによって起こりやすくなります。ただ、胸ヤケの本質的な原因や、治療法は様々な不明点があります。とりあえずは、健胃消化剤の服薬がよいでしょう。