Question  妊娠中にレントゲンをとると子供に悪影響があると聞きますが、どのような影響があるのですか?  Cat

Answer  妊婦さんが不安に思うことの一つにレントゲン被爆の胎児に与える影響があります。妊婦さんのレントゲン被爆に関するポイントは被爆した妊娠時期と胎児被爆線量の総計の2点です。つまり「いつどのようなX線検査をどれだけ受けたか」ということ。実験動物では、各臓器それぞれについて限られた時期に相当して先天異常の危険期があることや、ほとんどすべての先天異常についてしきい値(それ以下の被爆線量では危険発生が否定できる値)が存在することが知られています。ただしヒトに関する信頼できるデータは、広島長崎の被爆者に対する調査結果(対象約250人)しかなく、これに実験動物のデータから得られる推論を加えて考えるしかないのが実情です。

被爆時期について

妊娠3週未満:胚の子宮内着床以前の放射線の影響は、大量の放射線被爆があると胚は死亡するが、被爆後死を免れて着床した胚では、子宮内死亡や出産あるいはその後にみられる奇形の誘発頻度が増加するという証拠はなく、正常に発生するものと考えられています。

妊娠3~15週:この時期は胎児が催奇形因子に弱い時期であり、一般的にはこの時期に胎児が放射線被爆を受けた場合、胎児の奇形や発育障害を生じる可能性があるとされています。

被爆量について

診断的線量で胎児に奇形が誘発される可能性はまずないことがほとんどです。すなわち前述の胎児の器官形成期に問題を起す可能性のある最低線量は50~100ミリシーベルト(シーベルト:放射線の単位)とされています。この線量はどの程度かと言うと、胚(胎児になる前)の被爆線量が5レムに達する撮影回数や透視時間でいえばつぎのようになります。胸部撮影で25000枚、腹部撮影で300枚、腰椎撮影で150枚、胃透視で4時間など。しかし、骨盤部CT、注腸造影では被爆線量は多くなります。したがって長時間の注腸造影や骨盤CTを繰り返しおこなった場合などは問題となりますが、その他の撮影ではまず問題とはならないと考えられます。まして、上の子供さんのレントゲン撮影に付き添っていた程度では全く問題ありません。

理想的なレントゲン撮影時期について

被爆線量がいくら少ないからといっても、不必要な妊娠中の被爆はないにこした事は有りません。妊娠の可能性のある女性のレントゲン撮影を受けるとすれば、月経直後の妊娠が否定できるときがベストであると思われます。予約が必要なレントゲン撮影を受けるときで月経日の予測が難しく、月経直後の予約が困難なこともあります。その場合は予約前は避妊をしっかりとしておく必要があるといえましょう。