Question  現在3人目を妊娠中です。上2人の時もおなかのはりがあり、今回も同様にはっています。頚管縫縮術も行い、安静にといわれていますが、家事などどの程度できるのでしょうか。  Cat

Answer  切迫早産の状態と思われます。早産は「妊娠22週から妊娠37週未満の分娩」と定義され、発生率は全分娩の約5%とされています。早産は周産期死亡の最も大きな原因の一つであるとともに、とくに早期早産児は特発性呼吸窮迫症候群、頭蓋内出血、未熟児網膜症、慢性肺疾患などの罹患が問題となります。一方、早産児はこうした医学的問題だけではなく、治療や養育・介護などに莫大な費用を要し、社会的ならびに医療経済的問題も指摘されています。このように早産の防止は周産期医療における今日的課題であり、早産の前段階である切迫早産を適確に診断し治療することは極めて重要な意味を持つことになります。したがって妊婦管理のうえで早産の予防は最も重要な目的の一つといえます。

切迫早産とは多くの母体側、胎児側の原因により、子宮収縮と子宮頚管の熟化(子宮の出口がやわらかく、薄くなり、開きかかること)が促進されておこります。頚管無力症とは妊娠中期以降規則的な子宮収縮や、さしたる症状もなく子宮頚管が開大するものをいいます。放置すれば胎胞(羊水の入った卵膜が子宮口に向かって胞状に膨隆したもの)を形成し、やがて破水、流早産に至ります。

子宮収縮は自覚として腹部緊満感、下腹部痛、腰痛などがありますが、他覚的には胎児心拍数陣痛計により極めて正確に捉えることが出来ます。そこで子宮口開大や頚管の展退(子宮頚部が薄くなり短縮すること)、出血などがあれば切迫早産と診断されれ、破水がないとすれば切迫早産の程度に応じて外来管理、あるいは入院管理をすべきかが決定されます。外来管理となれば自宅安静(すなわち診断書を書いて仕事を休む)のうえ、子宮収縮を抑える薬物を内服治療することに。入院管理の場合は臥床安静を保ち、同様の子宮収縮を抑える薬物を強力に投与(例えば24時間精密持続点滴など)します。

頚管無力症は子宮口開大、頚管展退が見られるので、入院し麻酔下に子宮の入口をテフロンテープやナイロン糸で縫縮する頚管縫縮術が行われます。

お問い合わせの方は前の2回の妊娠中に早産しかかった経緯があり、予防的に頚管縫縮術をしておいて、切迫早産に対し注意して経過観察中と思われます。子宮収縮の程度は客観的評価としては前記の胎児心拍数陣痛計の測定結果と、ご自分の子宮収縮の自覚の2点で判断することになります。前の2回の妊娠中の状況と今回の子宮収縮、さらには子宮口、子宮頚管の所見(内診や超音波断層法を用いた評価)を加味して今後の方針を立てることになります。ただ、ご自宅での家事についてはどの程度のことまで可能かといったことは判断が極めて困難です。すなわち、切迫早産の管理として前記の外来管理とすべきか、入院管理とすべきかは当然判断されなければなりませんし、外来管理となった場合は通常は職場を休んで自宅安静ということになります。切迫早産の状態が進行してゆきそうであると判断されれば、治療方針、安静度とも厳重になってゆきます。