Question  今、32歳です。できれば双子が欲しいと思っているのですが、双子の場合でも自然分娩(べん)できますか?  Cat

Answer  一般的に双胎以上の多胎の頻度は一般の妊婦で1%、経口排卵誘発剤妊娠で2%、注射による排卵誘発剤妊娠で20%、体外受精妊娠で30%と言われています。また、自然妊娠の双胎では30%は一卵性、70%は二卵性双胎です。排卵誘発例では二卵性双胎が圧倒的多数となります。周産期管理の発達により多胎妊娠の予後は大幅に改善されつつありますが、基本的に、妊娠中や分娩時の母体や胎児に対する危険性は多胎は単胎よりも多く、単胎妊娠に比べ多胎妊娠は現在でも約5倍の周産期死亡が認められます。

多胎の診断は妊娠初期に超音波断層法で容易に診断されます。現在では経膣超音波断層法が普及しているので、妊娠2ヶ月の後半~3ヶ月に診断されることが多いと思われます。初期の双胎のうちで約20%は1児が発育せずに消えてなくなることがありますが、これはそのまま放置しておいてよく、その後は単胎として取り扱われます。

双胎妊娠では子宮容量がきわめて大きくなります。妊娠4ヶ月までは単胎妊娠と同じですが、妊娠5ヶ月で単胎妊娠の約2倍の容量となり、妊娠7ヶ月では単胎妊娠の妊娠末期に相当する大きさとなります。したがって合併症も多くなり、妊娠中は双胎間輸血症候群、双胎の1児が子宮内胎児死亡となった場合、貧血、流産、早産、羊水過多、妊娠中毒症、あるいは羊水検査や超音波検査で1児に先天異常が認められた場合などが問題となります。このうち胎児間輸血症候群とは双胎例の一部のケースでは双胎児のそれぞれの胎盤に血管吻合があるために、双胎の児から児へ血液が移動し、供血児は高度の貧血と胎児発育遅延、受血児は浮腫が発生するわけですが、効果的な治療法がないのが現状といえます。またこのような胎盤間に血管吻合がある場合では双胎の1児が死亡すると、母体や生存している他児に対して様々な危険性が発生します。

分娩時は臍帯脱出、微弱陣痛、懸鈎(骨盤内に2児が進入し娩出できなくなる状態)、第2児の分娩、遷延分娩、弛緩出血などが問題となります。分娩時の胎位は頭位-頭位が40%、頭位-骨盤位が30%、骨盤位-骨盤位が10%となっています。分娩方法としては個々のケースでは種々の意見はありえますが、帝王切開となる頻度は単胎よりも明らかに多くなります。

以上のように多胎妊娠には様々な問題があります。簡単に「双子ができればいいな」と思われるかもしれませんが、現実には妊娠中や分娩時に困難な事態が起こり得ます。産科医療の現場ではそれらの困難な事態をどうすべきか、苦悩しているのが現状です。双胎妊娠1回よりも、単胎妊娠2回のほうが危険性ははるかに少ないと考えられ、双胎妊娠を安易に望まれるべきではないと考えます。