Question  今、出産間近の妊娠9ヶ月です。2人目なのですが、車の運転をよくします。1人目の子がいるので、ついついだっこするよりは...と思い車を利用してしまいます。車の振動がよくないと聞くのですがお腹の赤ちゃんには影響がないのでしょうか?またシートベルトでお腹をしめても大丈夫ですか?  Cat

Answer  一般的に正常妊娠の妊婦さんは、通勤を伴う仕事や家事を含め、妊娠前と同じ通常の社会生活を送ることができます。

車の運転もその通常の社会生活の範囲内と考えられます。1人目のお子さんがおられ、車はとても便利であろうと思います。現在の日本の道路事情や車の性能から考えて、子宮やその中の胎児に重大な影響を与えるほどの極端な振動が発生するとは考えられません。むしろ、車を使用せずに1人目の子供さんを連れて移動することの方がストレスが大きいとも考えられます。正常妊娠の妊婦さんは妊娠37週以後の正期産の範囲(それ以前は早産、流産の範囲となります)になるまでは、簡単に振動が原因となって陣痛が発来したり、子宮口がやわらかくなったり、うすくなったり、また開大するようなことは通常ではおこりません。

妊婦検診の目的の1つに、流産や早産が起こりそうな方を早めに見つけ出し、「頚管無力症」、「切迫流産」、「切迫早産」と診断して加療することがあげられます。妊婦検診を受けられて、そういった異常を指摘されず、正常妊娠が継続していると判断されている方においては車の運転を禁止するといった指導は行われません。「頚管無力症」、「切迫流産」、「切迫早産」などの状態にある方は安静加療や入院治療が必要な状態の方なので、車の運転をうんぬんする前に、通常の社会生活を送ることができないわけで、このような方はこの話からは除外されるのは当然です。

ご指摘のように車の運転に関連して「シートベルト」の問題があります。文献によりますと様々な誤解があるようです。

誤解その1「シートベルトは赤ちゃんを傷つけるだろう」→自動車事故における胎児死亡の主原因は母親の死亡です。妊婦さんがシートベルトをしていれば、生存の確率はぐっと高まります。また、シートベルトによって腹部に衝突の力が加わっても子宮は風船のようなものなので、一部がへこんで内部の圧力が高まっても胎児や胎盤はその全体で高まった圧力を受けるため、局所的な損傷は通常発生しません。衝突時以外においても、腹帯と同じ程度の力しか加わっていないので問題はありません。

誤解その2「脱出できなくなるのではないか」→衝突による火災はめったに起こらないし、また火災が発生しても乗員に意識があればシートベルトはほとんど例外なくはずせると考えられています。

誤解その3「近くに行くときはシートベルトを使う必要はない」→衝突のほとんどは家から約40km以内で発生している。

妊婦交通事故441例の調査ではシートベルトで胎児死亡も流産も増えることはなく、シートベルトをせずに車から放り出された場合妊婦死亡率33%、胎児死亡率47%、放り出されなかった場合は妊婦死亡率5%、胎児死亡率11%と報告されています。広島県警に問い合わせたところ、妊婦さんに対してはシートベルトを着用していなくとも違反とはしないそうですが、データとしてはシートベルトを着用した方が安全と言えます。ちなみに世界の先進国17ヶ国うち、妊婦だけ一律にシートベルトの着用を除外する法律があるのは 日本だけのようです。