Question  今妊娠3ヶ月なのですが、妊娠がまだ分からないときに主人と一緒に風邪薬と便秘薬を飲んでしまいました。お腹の子供は大丈夫でしょうか、異常児となるのではと悩んでいます。  Cat

Answer  有名となったサリドマイド禍以後、妊婦さんの間で妊娠中に服用した薬剤についての関心が急激に高まりました。妊娠と薬物に関しては非常に膨大な組み合わせが考えられるため、現実には個々のケースでご説明することになるのですが、ここでは一般的なお話を今までの報告より引用させていただきます。

薬剤の服用により胎児に影響を及ぼす時期や内容は異なっています。まず、受精の成立から18日目以前(およそ妊娠1ヶ月過ぎまで)に投与された薬剤が、催奇形性(胎児奇形の原因となり得る可能性)という意味では胎児には影響はありません。もしこの時期に受精卵が薬剤の影響を受けたとすれば流産となるか、あるいは健児となって分娩にいたるかのどちらかとなります。これをall or noneの法則と呼んでいます。したがってこの時期の薬剤の投与に当っては、胎児への影響を考慮する必要はあまりありません。たた、薬物に残留性がある場合は注意が必要となります。

次に受精後19日から37日まで(およそ妊娠2ヶ月に相当する時期)は、胎児の中枢神経、心臓、消化器、四肢などの重要臓器が発生・分化し、催奇形性という意味では胎児が最も敏感な時期にあたります。この時期は種々の催奇形性因子に対して感受性を持つじきで臨界期とも呼ばれています。したがってこの時期の薬剤投与、あるいは服用してしまった場合は十分に文献的に調べる必要があります。

妊娠3ヶ月から4ヶ月の期間は、催奇形性という意味での薬剤の影響はかなり小さくなります。胎児の大部分の器官の形成は終わっていますが、しかしまだ性器の分化や口蓋の閉鎖などはなお続いています。つぎに妊娠5ヶ月以降になりますと催奇形性が問題になることはなく、胎児に対する毒性が問題になります。つまり、薬剤によって胎児の機能的発育に及ぼす影響や胎内環境の悪化(例えば羊水減少)、発育の抑制などが報告されています。

しかし、以上のような薬物の影響を恐れるあまり、極端に薬物を拒否されると、異常妊娠の治療や妊娠合併症の治療が不可能になります。産婦人科では患者さん個々に対応して十分な検討をした上で、治療が必要な方には投薬治療を行っています。ご心配な点があれば主治医にお問い合わせになれば十分なご説明が受けられると思います。

アメリカのFDAでは妊婦さんの薬物服用における胎児危険度分類をカテゴリーA,B,C,D,Xの5つに分類しています。妊婦さんの状態により、カテゴリーA,B,C,Dの薬剤は使用されますが、どんな状態であってもカテゴリーXの薬物は使用してはならないとされています。

また、男性が服用した薬剤についてはチガソンカプセルなど特殊な薬剤以外であれば、催奇形性という意味では胎児には影響はありませんので、ご主人の件についてはご安心下さい。

おたずねの風邪薬、便秘薬については一般的には妊婦さんへの投与については問題がないことがほとんどですが、服用された薬剤名を主治医に伝えて、説明を受けられればご納得いただけるでしょう。