外陰部のかゆみが続いています。産婦人科に行くべきでしょうか?
産婦人科外来を訪れる患者さんの中では不正出血とともに外陰部掻痒感を訴えて来院される方が最も多いものです。病態としては大きく分けて感染によるものとそうでないものの2種類があります。
(1) 感染によるものはその原因としてかびの1種であるカンディダ菌、白癬菌、トリコモナス原虫、毛じらみ、ヘルペスウィルス、パピローマウィルス、大腸菌、淋菌、蟯虫の感染や寄生による膣外陰炎です。これらは顕微鏡検査や血液検査などで診断されます。それぞれの原因によって症状の程度も様々ですが、治療法も全く異なります。
(2) 感染以外のものとして、女性の外陰部は皮脂腺、汗腺に富み、膣や子宮からの分泌物により常に湿潤な状態にあり、衣服、性生活、尿、便などの刺激にもさらされているために、それらの付着が原因となる外陰炎やアレルギー性の皮膚炎がおこりやすくなります。更年期以後ではエストロジェンという女性ホルモンの分泌低下によって膣粘膜や外陰部の萎縮が原因となる外陰炎もおこりやすいものです。また、糖尿病や肝臓腎臓疾患などの全身疾患でも外陰炎は起しやすくなります。さらにご高齢の方では外陰部の前がん病変や外陰がんなども外陰部掻痒感を訴えて来院されるケースもあります。
産婦人科では外陰部掻痒感を訴えて来院された場合以上のような原因を念頭において検査、診断して治療を行っています。
治療は感染の原因が明らかであれば、原因に応じて洗浄の後膣坐薬投与、外陰塗布薬の投与、内服薬の投与を行います。ホルモン分泌低下が原因であればホルモン療法、また全身疾患が原因であればその検査、治療、さらに悪性病変が疑われれば組織検査といった具合に単に「外陰部掻痒感」を訴えて来院された方でもその原因や検査法、治療法も様々に異なってきます。長期間にわたり膣外陰炎を放置された場合外陰部の病変も高度となり、さらに全身疾患や悪性病変がその基礎にあった場合は重大な結果となるケースも有り得ます。