今妊娠3ヶ月ですが、少量なのですが出血があります。胎児は元気だと言われているのですが、大丈夫でしょうか?
正常妊娠では最後の月経より分娩まで出血しないのが通常です。ところが妊娠中(初期、中期、末期)に出血を起こすことは産科の臨床上はよく見られます。その中で妊娠初期に出血を起こす原因となるものを列挙してみます。
(1) 流産関係ではまず切迫流産があります。これは妊娠6週以後は胎芽の心拍動が観察されますが、正常に心拍動が見えて胎芽が死亡していないにもかかわらず、出血、下腹痛が見られるものをいいます。流産しかかっているという状態と考えられます。このまま流産せずに出血も止まり、下腹痛もなくなり、正常に発育してゆくこともありますが、胎芽が死亡した場合は、進行流産、不全流産、完全流産、稽留流産といった流産と呼ばれてその後の正常な胎芽の発育はなくなります。
(2) 子宮外妊娠も妊娠初期に出血をします。子宮外妊娠とは受精卵が子宮腔内以外の部位に着床、発育するものを言い、その部位は卵管、腹腔、卵巣、子宮頚管の順となっています。ただ、この場合は妊娠反応が陽性と判定されるのに子宮腔内に胎嚢(胎芽が入っている袋)が認められないので当然胎芽も見られません。経膣超音波断層法で、子宮腔内に胎嚢が認められれば通常は子宮外妊娠は否定されます。しかし、まれには子宮頚管に妊娠した大出血の原因となる頚管妊娠や子宮内子宮外同時妊娠などもあり、1回の診察では診断が困難なケースもあります。
(3) 胞状奇胎とは日本人では約500例に1例程度に見られ、絨毛と呼ばれる胎芽の一部が袋状にふくらみ中に液体がたまりあたかもイクラのようになったもので染色体異常が関与するとされています。このような変化が一部に限局され、残された健常部の状態によっては胎児が妊娠末期まで生存することもありますが、通常は全胞状奇胎で胎児はいません。この胞状奇胎も妊娠初期に出血をおこします。
(4) また、妊娠とは無関係な出血をおこす婦人科的疾患として次のようなものがあります。子宮頚部ポリープ、一部の子宮筋腫、子宮頚管炎、子宮頚がん、膣炎など。
以上簡単に妊娠初期の出血を起こす原因となる病態についてお話しましたが、原因として単独ではなく、複数のものが関与しているケースもあります。
おたずねの方は妊娠3ヶ月で胎児の心拍動も観察されているようなので、上記の切迫流産の状態と考えられます。胎児が死亡しているわけではないので、安静を保って経過を見てゆかれるべきでしょう。