妊娠2ヵ月で流産してしまいました。私は5年前にC型肝炎であることがわかり、治療を受けましたが治癒しませんでした。現在、肝機能の異常はありません。このC型肝炎が、流産に関係しているのではないかと、心配でたまりません。そして妊娠したとしても、C型肝炎がどのように影響を及ぼすのか、不安です。
おたずねのC型肝炎とは日本人の約2%に認められ、頻度の高い疾患です。20年から30年の経過をたどって、慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと進行することがあるので定期検診が必要な疾患です。
おたずねの以前の流産とC型肝炎は全く関連性はありません。当院のHPにUPしておりますように流産は約15%の妊娠におこります。あなたがたまたま運が悪くて流産になっただけで、C型肝炎とは無関係とお考えになるべきでしょう。
次に、C型肝炎の方が妊娠された場合のお話をします。現在の妊婦検診では妊婦さん全員にC型肝炎抗体検査を実施している施設がほとんどであると思われます。これは母子感染(垂直感染ともいい妊娠中、分娩時に母から子へC型肝炎ウィルスの感染を受けること)の可能性があるからです。このC型肝炎抗体陽性という意味は、過去に感染したことを示すものです。この中には過去に感染して現在治癒している方と、過去に感染したC型肝炎の感染が現在も持続している方の両者が含まれます。
そこでC型肝炎抗体が陽性と判定された方については精密検査をして現在も感染が持続しているのかどうかを調べます。この精密検査が陰性であれば過去の感染はあったが現在は治癒しており血液中にC型肝炎ウィルスはいないと考えられます。
つぎにC型肝炎精密検査が陽性となった方は慢性あるいは急性C型肝炎の方と、健常C型肝炎キャリア(無症候性ウィルス保有者)といってC型肝炎ウィルスを血液中に保有している方が含まれることになります。この両者は血液を採って調べる肝機能検査を行うことにより区別されます。
このC型肝炎は主に血液を介して伝播します。分娩時は産道内に母体からの血液に触れることによって母子感染の可能性があります。そこで、問題はどの程度母子感染が起こるかということになります。ご存知のようにB型肝炎ではキャリアの妊婦さんからは高率に母子感染が発生します。C型肝炎においては、いま精密検査がやっと始まったばかりといったところで十分なコンセンサスが得られた情報はありませんが、最近数年間の研究報告からみるとB型肝炎にくらべてC型肝炎は母体血中のウィルス量が少ないために、母子感染の頻度はB型肝炎に比べてかなり少ないようです。報告をおしなべて大体10%前後といったところのようですが、この数字は今後の研究に待たれるところが多いと思います。はっきりといえることはC型肝炎抗体陽性でも、精密検査で陰性の妊婦さんからは現在まで母子感染の報告はありません。したがってC型肝炎精密検査が陰性の方はご心配は無用です。
出生後の新生児に関しては、出生後の臍帯血検査によるC型肝炎精密検査にて、母子感染の有無を診断します。その後は小児科にて定期的なフォローをしています。出産後の授乳についてもC型肝炎褥婦さんからの経母乳感染は認められていませんので、現時点では母乳保育を中止する必要はありません。
また、分娩時以外では家族内感染、夫婦間感染が認められますので月経血、鼻出血などの血液の処理に注意を払う必要があります。しかし、入浴、洗濯、食事などは通常通りでかまいませんし、家族内感染率と夫婦間感染率に差は認められないので、性生活に際してもことさらスキンの使用を始める必要はありません。C型肝炎の治療にはインターフェロンが有効とされています。