お産後6ヶ月たちましたが、まだ生理らしいものはないのですが少量の出血があります。産後の検診では異常はないといわれたのですが、どうなっているのでしょうか?
分娩後の月経開始の状況についてのお問い合わせと思います。
産後の一般的な経過を簡単にご説明しますと、妊娠によって約1000gまで増大した子宮も4~6週間後には正常大である約100g弱となり、子宮腔、子宮内膜、子宮頚部も元の状態に戻ります。分娩後に子宮、膣から排泄される分泌物を「悪露」(おろ)と呼びますが、教科書的には赤色悪露→褐色悪露→黄色悪露と変化してゆき、最後に白色悪露となって3~5週間で悪露はなくなるとされています。妊娠中は胎盤から大量のホルモンが分泌されており、もちろん月経はありません。分娩時にそのホルモン分泌臓器である胎盤が娩出されると血液中のホルモン値は急速に低下しますが、やがて通常の月経周期を作り出す周期的なホルモン変動が始まり、月経が再開します。産後の第1回目の月経様出血を見るのは母乳栄養のみの場合平均152日、混合栄養の場合平均110日、人工栄養のみの場合平均84日という報告があります。
以上のお話はそういったことが多いという程度で、現実にはそのようにならないことは多々あります。産婦人科では産後の検診において正常、異常の判定は「何か処置を必要とする状態」を異常と判定しています。「正常」と判定されるということは「何も処置は必要としない状態」ということであって必ずしも前に述べた産褥経過をたどるという意味ではありません。産後の出血においても順調な月経周期を作り出すホルモン周期が始まる前は小さなさざなみのようなホルモン変動がありその谷間で少量の出血が頻繁にあることはよく見られます。また母乳がよく出る方は下垂体からのプロラクチンというホルモン分泌が盛んなために授乳期間である1~2年の間まったく月経がない状態の方もあります。このような方に対してプロラクチン値を下げるような治療や月経をおこすようなホルモン治療を行うと月経は開始しますが、母乳の分泌が悪くなるため通常は授乳期間中は月経がないままにしておくことがあります。しかし、断乳後も月経がなければ月経が再開するように治療をする必要があります。以上のように産後の状態には個人差が非常に大きいものであるということをご理解ください。
その他の注意すべきこととして、新たな別の妊娠の可能性ということがあります。産後は月経が1度もないまま妊娠されているケースがあり得ます。この場合は「月経が遅れている」という自覚がないために妊娠されていても、産婦人科を受診されるのが遅れることが多いものです。もし、新たな妊娠をされているのであれば当然月経はありませんし、少量の出血が続くのであれば妊娠初期の出血ということになります。そうすると切迫流産、子宮外妊娠、胞状奇胎などの異常妊娠の可能性もあります。こういった場合は当然産婦人科を受診され適切な診断、処置を受けられる必要があります。