外陰部に激痛があり、産婦人科で性器ヘルペスといわれました。とにかく痛くて痛くてたまりません。いつまでこの痛みが続くのでしょうか?飲み薬をもらって飲んでいますが、よくなりません。どうしたらよいのでしょうか?
性器ヘルペスは最近増加傾向にある疾患で、単純ヘルペスウィルス(HSV)の感染により発症します。このHSVは人体の皮膚、粘膜、目、脳に感染します。このうち性器の皮膚、粘膜に感染し病変を起こしたものが性器ヘルペスで、性行為感染症の範疇に入っています。
性器ヘルペスによる病変は一般的に症状が強いものです。感染の機会があってから3~7日で突如として発症し、しばしば38~39℃の発熱を伴い、外陰に多発性水疱が出来てそれが破れて潰瘍が出現します。その潰瘍の部分の疼痛はかなり激しいもので、筆者の経験では朝来院された性器ヘルペスの患者さんに充分ご説明して投薬し帰宅していただいたのに、昼にあまりの痛さに再度来院され、また充分ご説明して再度帰宅していただいたのに、夜になってご主人が「あまりに痛がるので」と連れてこられたケースがありました。結局1日のうちに3回も来院されたわけです。椅子に座る、歩行するなどの動作だけで激痛があり、診察室に入ってこられる様子で性器ヘルペスを疑わせることもよくあります。
このHSVは外陰、子宮頚管、膀胱と広い範囲に感染を起こします。通常は2~3週間でいったん自然治癒しますが、このHSVは初感染後に、神経を上行して、神経節に潜伏感染し、何らかの刺激で再び活性化し神経を下行して再び皮膚、粘膜などに病変を形成する再発という特異な感染病態を示します。すなわち性器ヘルペスには(1)初感染による急性型と、(2)潜伏感染再活性化による再発型の2つの発症型があることになります。このうち再発型の場合は一般に症状は軽く、持続も1週間程度にとどまることが多く、再発を起こす誘因としては、妊娠、ステロイド剤投与、放射線、手術などがあります。
治療は(1)抗ウィルス剤の投与、(2)鎮痛剤の投与があり、症状の軽減は期待できます。
妊娠と合併した場合は新生児への感染があり得ます。新生児に感染した場合は全身ヘルペスとなり、危険で、死亡率も高いのが現状です。新生児への感染を防ぐ目的で経膣分娩ではなく、帝王切開を選択される場合もありますが、管理方式がほぼ決まっているので、詳しくは分娩される施設でおたずねください。