Question  11月3日に、旅行先のハワイで腎盂炎になり40度を超える熱を出し、病院に行き、抗生物質を何日間かのみ、点滴を打ちました。最近になって妊娠していることが分かりました。しかも2卵生双生児とのこと。抗生物質はホルモンに影響を与えるとききました。また、ハワイの病院の先生にも「妊娠していませんね」といわれたことが気になります。腎盂炎も気になります。妊娠したのはこの前後1週間くらいのようなのですが。主人とも薬の影響が心配なこと、双生児であることが重なって前向きに生む決心がつきません。  Cat

Answer  妊娠初期の腎盂炎、抗生物質の内服、点滴、双胎とのお話のように思います。これらのうち双胎に関しては全く別の問題です。すなわち双胎と腎盂炎、抗生物質の内服、点滴とは無関係で、日本人では約100回の妊娠に1例の割合で自然の双胎が発生します。ただ、昨今は不妊治療としてhMG-hCG療法といった強力な排卵誘発を行うことがあり、この場合は双胎を含めて多胎は自然に発生する割合よりも増えます。ただおたずねの方は人工的な双胎ではなく、自然に起こった双胎であり、このことは除外して考えられるべきものでしょう。

妊娠中は尿路感染症である膀胱炎や腎盂炎を起こしやすい状態にあります。正常の尿中の細菌数は1ml中に1000個以下ですが、「無症候性細菌尿」といってまったく、残尿感、頻尿、排尿痛などの症状がなくても尿中の細菌数が100000個以上の妊婦さんが5~7%おられます。このような方は現在は症状はなく一見正常のように見えますが、妊娠の経過中にその25%の方は腎盂炎に移行します。腎盂炎は左右の腎臓のうち右側が多く、さむけ、ふるえがおこり、腰痛とともに38~40度の発熱を伴います。このような状態となれば多くは入院が必要となり、尿中の細菌の検査を行い、朝夕の抗生物質の点滴や内服が必要となります。適切な薬物選択が行われれば症状は2~3日で改善することが多いものですが、抗生物質や抗菌剤の投与は少なくとも10日間は続ける必要があります。

妊娠中は尿路系が非妊時に比べて拡張していること、尿が膀胱から尿管内に逆流しやすいこと、つわりから脱水傾向があれば尿量が減少することなどから無症候性細菌尿の状態から腎盂炎に移行しやすいものです。また、妊娠前から尿路感染症がある方は妊娠によって悪化しやすいと言えます。

腎盂炎が起これば必ず薬物治療が必要となります。治療薬剤に関しては、セファロスポリン系やペニシリン系の抗生物質を使用することが多いのですが、その他の薬剤については個々の事例で使用薬剤と妊娠時期から胎児に対する問題について産婦人科ではご説明しています。しかし、前記以外の薬物においても一般的には極端な問題が起こるといったことは考えられないのが通常です。