Question  私は今妊娠9週目なのですが、実は、先日(8週終わり頃)インフルエンザに罹りました。高熱が出て体中の関節が痛く、薬を飲まなかったので非常に辛かったですが、安静にしていたお陰で2日で熱が引きました。心配なのは、インフルエンザウイルスが胎児に奇形を引き起こさないかということです。胎盤を通ってウイルスに感染する、と本で読みました。中絶も考慮に入れた方が良いのでしょうか?いてもたってもいられず、とても不安です。  Cat

Answer  現在インフルエンザが流行しておりたくさんの方が感染しています。その中には老人、乳幼児において合併症を起こす重傷例も出ています。もちろん妊婦さんの中でも感染された方がおられるはずであり、母体のウィルス感染による胎児に対する影響として風疹による胎児の「先天性風疹症候群」はあまりにも有名であり、その関連で妊婦さんの中には胎児に対する影響を心配されている方もおられると思います。

文献的には母体のインフルエンザ感染による胎内感染が原因と考えられる先天異常児の発生については肯定する報告と否定する報告があります。しかし、肯定する報告に関してはその内容が特殊な地域のもので発症率もわずかであるというものであり、その他多くの報告は否定の報告です。したがって現在までのところインフルエンザが先天異常児を発症させるという確かな根拠はないとする考え方が一般的です。 また、最近の文献や産科教科書にはインフルエンザの胎児に対する危険性に関する記載はありません。

私個人の産科臨床に携わっている感触からもインフルエンザウィルスは催奇形性は考えられないのではないかと思っています。もちろん人工妊娠中絶術を考慮するといった内容ではありませんので、ご安心ください。

妊婦さんがインフルエンザに感染した場合は母体に対する影響として、「つわり」による脱水状態、「嘔吐」による鼻粘膜や喉頭粘膜の腫脹や充血、腹部が増大することによる横隔膜の挙上や呼吸機能の変化、体重増加による酸素必要量の増大などが関与して、非妊時に比べて一般的には体にこたえやすいといえます。したがって万が一インフルエンザに感染した場合は医療機関で加療を受けるとともに、「安静」「保温」「水分、ミネラル分の補給」がより重要なことになります。おたずねの方は「薬を飲まなかった」とありますが、薬物治療に対する過剰な不安は経過を長引かせ、また重症化する可能性もあります。医療機関で現在妊娠中であることを申し出れば妊婦さんに対して適切な薬物治療を受けられます。細菌感染による合併症を防ぐ意味でも重要なことなので安心して治療を受けられるべきでしょう。

また、感染をふせぐ意味で日頃から「人ごみをさける」「うがいの励行」「手洗い」を念頭においておくことが必要でしょう。