妊娠検査薬で妊娠しているという結果が出ました。不本意な結果なので中絶したいのですが問題があります。それは私の血液型がRh(-)なのです。中絶に伴う出血により母体がRh(+)の抗体を持つようになり、次の子供を産めなくなるとききました。私の希望は「次の子を普通に出産したい」ということなのですが、、、。
血液型不適合妊娠に関するお問い合わせと思います。理論的にはRh因子以外の血液型でも血液型不適合妊娠は起こりえますが、問題となるのはほとんどの場合Rh因子の不適合といわれています。日本人のRh(-)の頻度は0.5%と報告されています。したがってRh(-)の女性が妊娠した場合そのほとんどは相手の男性はRh(+)と思われます。まれに女性も男性もRh(-)の組み合わせがあり得ますが、その場合は胎児の血液型はRh(-)となり血液型不適合妊娠とはなりません。ほとんどのケースと考えられる女性がRh(-)、男性がRh(+)の組み合わせであれば血液型不適合妊娠となります。なお、男性がRh(-)、女性がRh(+)という組み合わせでは血液型不適合妊娠ではありません。詳しいことは省略しますが、女性がRh(-)、男性がRh(+)で妊娠された場合胎児の血液型は93%はRh(+)、7%がRh(-)となります。
その血液型不適合妊娠とはRh(-)の女性がRh(+)の赤血球に触れることによって、Rh(+)の赤血球に対する抗体を作り出すようになることが問題とされます。このRh(+)の赤血球に対する抗体を作り出すようになることをRh(+)の赤血球で感作(かんさ)されると言います。この感作された状態で次の妊娠をされた場合にその胎児の血液型がRh(+)であれば、Rh(+)に対する抗体が母体から胎盤を通過して胎児に移行し、胎児の赤血球をこわして胎児の溶血性貧血が発生することになります。
この感作という現象は以上のメカニズムで起こるために、妊娠したことのないRh(-)の女性であれば、感作されていることはまずありません。しかし、妊娠された場合はRh(+)の胎児をお腹に入れているわけで、人工妊娠中絶以外に、流産、通常の分娩、子宮外妊娠、羊水穿刺、絨毛採取、胎児血液採取、胎児手術などの産科検査、治療、分娩などによってRh(-)の母体が感作されることは充分に考えられます。それらの際に感作された場合は次回の妊娠をされたときに胎児に対して抗体が作用して胎児の溶血性貧血という合併症を起こすことになります。
そこで感作成立の予防といったことが重要になりますが、これは感作を防ぐ薬があります。前述の人工妊娠中絶、流産、分娩などの際にこの薬による処置によって感作されるのを防ぐことが出来ます。分娩の際は新生児の血液型を調べてRh(-)であれば感作されることはないので必要ありませんが、Rh(+)であればこの薬によって感作を防ぎます。人工妊娠中絶、流産などでは通常胎児の血液型を調べることは出来ないので、胎児がRh(+)であるという想定で感作の予防処置を行うのが通常です。
このような感作成立率は初期の人工妊娠中絶術で3~4%、中期で5~10%と報告されています。おたずねの場合も胎児の父親がRh(+)であれば手術後に感作の予防処置をされるべきでしょう。