胞状奇胎と診断され流産手術を受けました。体の方は大丈夫なのでしょうか?また、今後子供も産むことはできるのでしょうか?
胞状奇胎とは一般的には「ぶどう子」とも呼ばれ、妊娠の異常のうち子宮内にぶどうの房やイクラのような水疱状のものがたくさん詰まった状態のものをいいます。医学的には絨毛性疾患と呼ばれるものの中のひとつです。
胞状奇胎は西洋人に比べて東洋人に多く、日本では500例に1例程度の発生率ですが、若年者より高年妊娠の方に多く見られます。また、胞状奇胎は、7割が全胞状奇胎、3割が部分胞状奇胎に分けられます。簡単に言えば子宮内全部が胞状奇胎であるものが全胞状奇胎で、子宮内に胎芽、胎児、臍帯があって一部に胞状奇胎を認めるものを部分胞状奇胎と言います。
原因は世界的に有名な広島大学医学部産婦人科の研究などから様々な染色体異常であることがわかっています。症状としては正常妊娠にくらべて、「つわりがひどい」、「不正出血がある」、「奇胎組織の急速な発育により通常より子宮が大きいこと」などがあげられます。診断は現在では経膣超音波断層法が一般的になっていますので、全胞状奇胎のケースでは妊娠初期から子宮内に胎芽、胎児が見えず前述のような水疱状のものが多数認められることによって容易に診断できます。しかし、部分胞状奇胎の一部のケースでは正常胎児が存在していた場合はなかなか診断困難なケースもあります。通常では妊娠反応のもととなるhCGというホルモンは正常妊娠の場合より高値となっていることが多いものです。
胞状奇胎の予後については全胞状奇胎ではその約15%に子宮筋層内に侵入する侵入奇胎が発生し、5%弱に絨毛がんが発生するとされています。ただし充分に管理された場合はその発生率はきわめて低くなると言われています。また、部分胞状奇胎から絨毛がんが発生することはきわめてまれとされています。
そこで、胞状奇胎と診断された場合は、まず奇胎組織を体内より完全に除去し絨毛がんの続発を予防することが必要となり、さらに続発する可能性のある絨毛がんの早期発見を目的とした管理も必要となります。日本では絨毛性疾患取り扱い規約が決められており、全国的に診断面での統一が行われ、管理方式もおおむね一定しています。まず診断のついた時点で、子宮内容除去術を1週間おきに2回行うことが一般的ですが、40歳以上の方で挙児希望の無い方では胞状奇胎が子宮の中にある状態で子宮全摘術を行うこともあります。さらにそれらの後ではhCG値を定期的に検査し、妊娠状態でない方と同レベルまで下降したことの確認が必要となります。また、基礎体温も正常の2相性に復帰することも必要となります。そうなった時点から3~6ヶ月前後経過を見て次回の妊娠を許可することが多いと思われます。
以上のことから、おたずねの方もきちんとした管理を受けられれば次回の妊娠も可能と思われますのでご安心下さい。