基礎体温をつけ始めてもう半年くらいになるのですが、高温期と低温期には分かれているものの、月によってははっきりと排卵日(ずどんと体温が落ちる日)がなく、いつが排卵日だろうって思う月もありました。排卵はちゃんとされてるのでしょうか・・・
基礎体温とは筋肉活動による発熱がない状態での体温、一般的には毎朝覚醒時起床前に口の中の舌の下で婦人体温計を使用して測定した体温のことをいいます。この婦人体温計は通常の体温計と異なり、1℃の間を20目盛に細かく区切られており微細な体温の変化を捉えるようになっています。この微細な体温の変化を観察することによって女性の月経周期中のホルモン変化や排卵の有無をご自分で調べることができます。
女性の卵巣から分泌される女性ホルモンにはエストロゲン、プロゲステロンの2種類があります。月経直後はエストロゲンが分泌されており、排卵直前にはエストロゲンが一時的に大量に分泌されます。月経周期中間期に成熟卵胞から卵子が排卵されると黄体となりプロゲステロンが分泌され始めます。この流れの中で、エストロゲンは体温を下降させる働きがあるので排卵前は低温相となり、排卵直前の大量のエストロゲンによって低温相よりさらに一時的な体温下降が起こります。排卵後は体温上昇作用のあるプロゲステロンが分泌されるので基礎体温は上昇し高温相となります。妊娠された場合はこのまま高温相が持続してゆくのですが、妊娠されなかった場合は高温相が12~14日持続した後プロゲステロン分泌が減少するために基礎体温は下降し低温相となり月経が開始します。この低温相→体温陥落→排卵→高温相→低温相となる基礎体温を二相性の基礎体温といいます。正常の有排卵月経周期の女性では基礎体温は二相性となります。ところが無月経(月経が3ヶ月以上無い状態)の女性や月経があっても排卵が無い無排卵周期の女性では基礎体温は低温一相性となります。ちなみに男性で測定しても基礎体温は低温一相性となります。
基礎体温を測定していても微細な変化を見ているために様々な測定誤差があり得ます。たとえばカゼ、歯痛などの炎症や測定前の筋肉活動によって体温が上昇したり、正確な部位での測定が行われなかったりすると誤差の原因となります。また、24時間に1回しか測定しないために排卵前の体温陥落が十分にキャッチできないこともあります。妊娠を希望して測定しておられる場合には最も妊娠しやすい排卵日を推定したいことになるわけですが、実際の排卵は基礎体温上では低温相から高温相に移行する2~3日の間に排卵することが多いと言われています。そうすると高温相に入ってから排卵日が数日前であったことが推定できることになります。したがってその当日に本日が排卵日かどうかはわからないことになります。また、体温陥落日自体も翌日に高温相になるかどうかが不明な状況ではあまり当てにはなりません。
排卵自体のより確実な観察には最近では経膣超音波断層法が行われています。これは卵巣内の原始卵胞が20mmあまりの成熟卵胞になり、排卵が起こり黄体が形成されるのを画面で見る方法です。これによるとある程度確実に排卵現象を捕らえることができます。まえに排卵があれば基礎体温が二相性となると言いましたが、逆に基礎体温が二相性であればおおむね排卵があると言えますが、一部のケースでは基礎体温が二相性でも無排卵のことは起こりうるとされています。また、高温相が短い場合や高温相を作り出すプロゲステロンの分泌が不充分な状態を黄体機能不全と言い、不妊の原因の一部とされています。