Question  婦人科で卵巣に腫瘍があるといわれました。1週間ごとに通院して、MRIもとりました。少しずつ大きくなって、今5センチになっているそうです。「もう少し様子を見ましょう」と言われるのですが、不安です。右下腹が張ってます。早く切ったほうがいいのでは、ないでしょうか? ほんとうは、メスをいれたくありません。でも、薬も出ないし、「1ヶ月後にきてください」といわれても、心配なのです。  Cat

Answer  卵巣は骨盤の中にある鶏卵大の子宮の左右両側にある親指大の臓器です。この卵巣は毎月の排卵や月経に関連したホルモン分泌を行っているわけですが、この卵巣に腫瘍が発生したものが卵巣腫瘍です。卵巣は人間のからだのもとになる卵子が入っている臓器なので、その卵巣に腫瘍が発生すると様々な組織型となります。最もポピュラーなものに皮様嚢腫といって腫瘍内に毛髪、歯牙、皮脂が入っているものがあります。卵巣腫瘍は人体の中で最も多くの組織型のバリエーションがある腫瘍と言えます。卵巣腫瘍の組織型は大きく分けて良性群、中間群、悪性群に分けられます。

卵巣腫瘍の診断自体はおたずねのように内診所見、超音波、CT、腫瘍マーカー(血液検査で腫瘍の状態を類推する検査)、 MRIなどからされます。左右どちらの卵巣に大きさがどれ位の卵巣腫瘍があって、超音波、MRI、CTでどんな画像か、腫瘍マーカーの値がどの程度か、癒着の具合、腹水の有無、その他といったことはわかりますが、現実には前に述べました良性群、中間群、悪性群のなかのどの群に入るどの組織型かを確定させるための組織検査が、解剖学的に手術を行う前には不可能であることが問題になります。たとえば子宮頚がんや子宮体がんなどは手術前にその組織を一部採取して、顕微鏡で見ることによって組織診断が可能なわけです。卵巣腫瘍に関しては手術して摘出すれば組織診断ができるため確定診断となりますが、手術せずに経過を見るケースでは最終的な確定診断はできないことになります。

卵巣腫瘍の取り扱いとしてはある程度の大きさ(一般的には7cm)があれば開腹手術によって卵巣腫瘍を取り除くことになります。また大きさが7cm以下であっても内診所見、超音波、CT、腫瘍マーカー、 MRIなどから中間群や悪性群を疑わせる所見があれば同じく手術療法が選択されます。したがって、おたずねの場合も中間群や悪性群を思わせる所見があればもちろん早い手術が必要ですが、そうでなければ一般的には7cmを越えた時点で手術を行うことが多いと思います。手術術式については術前所見、開腹時の所見、挙児希望の有無、年齢、合併症の有無などにより様々な手術術式が選択されます。術前検査所見より良性群と考えられ、挙児希望がある方であればもちろん将来の妊娠・出産に影響を与えない手術術式が選択されます。また、「薬も出ないし」とありますが、薬物によって治療することはできません。

また、卵巣腫瘍ではまれに茎捻転といって卵巣の付着部分がねじれることにより、急激な腹痛が起こることがあります。また下腹部を打ったりして卵巣腫瘍部分に外力が加わることによって卵巣腫瘍が破れることもあります。これらの場合はいずれも突然下腹部の激痛が起こりますので、その時点での緊急手術が行われることが多いと思われます。