現在妊娠9ヶ月なのですが逆子が直りません。逆子といわれたのは7ヶ月頃でした。それから雑誌で読んだ逆子体操と現在かかっている病院の先生に言われたように右側を下にして寝ています。逆子が直らないのはしかたないとしても、特に指導がないまま帝王切開になりそうです。ここの病院は逆子の場合は、ほとんど帝王切開の方法をとると助産婦さんが言っていました。主人の母親は自分も逆子だったけど自然分娩をしたといっています。しかし、特に指導や説明がないため、逆子の場合は頭があとから出てくるので呼吸に問題があるのではないかというくらいしかわかりません。逆子で自然分娩を行うとどのくらい危険か等、逆子での自然分娩の問題点、帝王切開での利点と欠点等をお教えいただいたら幸いです。なにぶん初産なものでどう判断して良いかわかりません。
骨盤位(逆子)は頭位に比べて頻度は少く正期産(37~41週)で約5%前後、早産では頻度が高くなり妊娠28週で約30%前後となります。したがって早産児では正期産児に比べて骨盤位の割合は多くなります。骨盤位早産の取り扱いは特殊なファクターが加味されますので、骨盤位正期産児の取り扱いについてご説明いたします。
概括的に申し上げれば、経膣分娩時には胎児仮死、死産は頭位に比べて多くなります。その最も大きな原因は胎児の形態にあり、頭部、胸部、腹部、臀部に分けてみれば胸部、腹部、臀部に比べて頭部が最も大きいことがあげられます。すなわち、頭位であれば最も大きい頭部が娩出できるほど子宮口が開いていれば胸部、腹部、臀部、足はするっと娩出されますが、骨盤位であれば頭に比べて小さい臀部、腹部、胸部まで出て、頭部がなかなか娩出されないと同時に児頭部と子宮口の間に臍帯が挟まれて圧迫され、窒息状態になることです。この窒息状態とは児は分娩前は母親が呼吸して得た酸素を胎盤から臍帯を通じてもらっています。この臍帯が圧迫され臍帯血流が障害されれば窒息状態になるので、早く頭部を娩出して呼吸をさせる必要があります。しかし、児頭部がなかなか娩出されず子宮内にあれば口も鼻も子宮内にあるわけで、一刻も早く児は気道内にある羊水を吐き出して酸素を吸いこまなければなりませんが、それが不可能となります。この状態が長く続くと、児は仮死状態となり、さらには低酸素状態から児の障害、児死亡へとつながります。
また、前期破水、早期破水が起これば臍帯脱出の可能性も大となります。それは頭位であればほぼ球形の頭部が先進しており隙間はないため臍帯脱出は起こりにくいのですが、骨盤位であれば臀部や足部が先進しているため先進部が不正形のため隙間があることにより卵膜が破れて破水すれば臍帯脱出が起こりやすくなります。臍帯脱出が起きると早期に上記の臍帯圧迫が起こり、児の危険につながります。したがって、臍帯脱出が起こった時点での緊急帝王切開が必要となります。
骨盤位分娩を経膣分娩ではなく、はじめから予定帝王切開とすれば瞬間的に分娩となるため以上のような経膣分娩のリスクは全くなくなります。しかし、ご本人やご家族が骨盤位経膣分娩のリスクを充分に理解された上で、児頭より産道が充分に大きいと判断されており、胎児仮死がなく、厳重な胎児モニタリングを行いながら、さらにいつでも直ちに帝王切開に切り替えられる準備、新生児仮死蘇生の準備のもとに、骨盤位経膣分娩に慣れた介助者が分娩介助を行なえばかならずしも経膣分娩が極めて危険とはいえません。したがって、経膣分娩を希望されるのであればその方向でもよいと思います。私の子供も骨盤位でしたが、経膣分娩をいたしました。現在では上記のように胎児仮死、障害児、死産などが起こりうる頻度が頭位分娩より多いために予防的に予定帝王切開を行う分娩施設が多くなりました。そのため最近では骨盤位の経膣分娩法を医師、助産婦に教育する機会が激減しています。児の立場だけから考えれば最もよい分娩法は帝王切開であることは間違いありませんが、母子双方の立場から考えて100%帝王切開がよいかどうかは議論の分かれるところとなっています。