私は、10日ほど前から、陰毛のあたりにかゆみがありました。しかし、毎日シャワーを浴びて、洗浄していたので、そのうち治ると考えていたのですが、全くその傾向にないので、自分で見てみると、陰毛に黒い点状のものが付着していました。かなりの数が付着していたため、手でわかる範囲で排除しました。10日間にとった卵の数は,20個以上になります。そこで、陰毛を剃毛し、婦人科へ相談に行きました。結局私は、全体を剃っていなかったので、全部剃ることにしたのですが、薬はいただけませんでした。それとも寝具などの影響ということになるのでしょうか?彼が感染している場合には彼も剃毛をしなくてはならないのですか?それとも、他の塗り薬なので対処することができるのでしょうか?
ケジラミによる外陰部掻痒症でしょう。このケジラミは吸血性昆虫でこれが陰毛に寄生することによって発症し、主として性行為によって感染します。ヒトに寄生するシラミにはアタマジラミ、コモジラミ、ケジラミの3種類がありますが、この中で性感染症をおこすのはケジラミのみです。国内では30年ほど前に増加の傾向がありその後減少していましたが、5年ほど前から再び増加の傾向をみせています。
ケジラミは幼虫から成虫まで雌雄ともヒトより吸血し、その血液を栄養源としています。また、宿主選択性が強くヒトにのみ寄生し、ヒトからのみ吸血します。吸血は1日に数回行われ成長し、脱皮を繰り返し成虫となり、交尾後雌は産卵します。虫卵は陰毛の根元近くに産みつけられセメント様物質で陰毛に固定されます。産卵後の虫卵は7日前後で幼虫が孵化し、脱皮を繰り返しながら成長し孵化後2週間あまりで成虫になり虫卵を産み始めます。成虫は4週間程度生存しその間に40個程度の虫卵を産みます。成虫は1mm前後の大きさでカニのような大きなツメを持つのが特徴です。
症状は感染後1~2ヶ月で掻痒感を自覚しますが、程度に個人差があり数匹の寄生で激しい掻痒感を訴える方が多いのですが、多数の寄生であっても症状を訴えない方もあります。しかし、一般的には掻痒感が強いため、かきむしった後のキズによる湿疹、毛嚢炎、膿疱を併発している方もあります。
感染経路は性行為による陰毛の直接接触による感染がほとんどですが、家族内での毛布、寝具、タオルなどによる感染もあります。ケジラミはヒトから離れた場合の生存時間は48時間程度で、歩行距離も1日10cm程度であるため接触以外の感染はまれといえます。
診断は拡大鏡で見て虫体が密着している陰毛を切除し、顕微鏡で見れば即座に診断可能です。ケジラミだけを陰毛から除去しようとしても密着しているためなかなな困難です。治療は陰毛の剃毛を行い軟膏を塗布することが行われていますが、おたずねのように剃毛に抵抗がある場合は薬物療法としてシラミ治療薬のパウダーやシャンプーを使用します。治療上の注意として、ケジラミは男性から女性、女性から男性へとピンポン感染を繰り返す可能性が充分あるため、本人およびパートナーの同時加療が必要です。また、家族内感染では家族単位での一斉加療が必要となります。また、薬剤は虫卵に対しては効果が無いため1~2ヶ月後に再検査し、慎重に治癒判定をする必要もあります。