Question  35歳初産です。質問があります。今妊娠38週です。もともと尿たんぱくが出やすく、妊娠前に検査したこともありますが、異常なし、分からない。というものでした。妊娠21週目から8回調べて6回たんぱくが出ています。でもむくみはないし、体重ももともと45.5キロが今49キロになっただけで血圧ももともと低く上が100あるかないか、下は60から70です。先週病院の(総合病院)先生が転勤になり担当が変わりました。するといきなり中毒症と言われました。陣痛を薬で起こそうといわれました。あまりに突然で腑に落ちません。担当医が変わらなければこんな事にならなかった訳で。体調はいたっていいんです。どうしたらいいのでしょうか?  Cat

Answer  妊娠中毒症とは妊娠中に、高血圧、タンパク尿、浮腫(むくみ)のうち1つもしくは2つ以上の症状がみられ、かつこれらの症状が単に偶発的に起こったもの(慢性腎炎など)でないものをいいますが、程度がピンからキリまで様々なものがあります。また、これら3つの症状のうち高血圧が最も重要視される傾向があります。妊娠中毒症というのは通常の医学用語での診断名と異なり、症状名とも言え、概念的にはあいまいな面が多い言葉と言えます。

原因は様々な研究にもかかわらず現在不明といわざるをえず、日本産か婦人科学会でも妊娠中毒症の考え方や分類はどのようにすべきか意見も多く、何度も改定がくりかえされています。しかし、この3症状がある妊娠中毒症の妊婦さんは、妊娠中毒症ではない妊婦さんに比べて母体にも、胎児にも悪影響があり、急速な母体の危機、急速な胎児危機が発生する可能性が高いことが大きな問題となります。

妊娠中毒症の方では、たとえば最高血圧が140であった方が数日後に血圧が200を超え緊急入院が必要となることもあり得ます。さらに妊娠中毒症が極端に悪化すると痙攣を起こす子癇(しかん)発作、意識障害、脳出血、肺水腫、肝障害、腎障害、血液異常などにより母体生命がきわめて危険な状況となることもあり得ます。したがってそれらの前段階としての妊娠中毒症は慎重に取り扱う必要があると言えます。

妊娠中毒症発症に関するハイリスク因子としては、遺伝的高血圧素質、高年妊娠、肥満妊婦、初妊婦または前回中毒症の経妊婦、多胎妊娠、本態性高血圧や慢性腎炎の合併、糖尿病の合併、過労などがあげられています。

母体に対する治療はまず精神的、肉体的安静を保つことが重要で、次に体重増加のコントロールのためのカロリー制限、減塩、高蛋白食など食事療法を行い、さらには薬物治療となります。

また母体に対する治療を行いつつ、一方胎児の状態を頻回にモニターし、胎児仮死の可能性をつねに調べ、胎児死亡につながる胎児仮死が起こりかければどうすべきか胎児管理の方法を決定しなければなりません。すなわち胎児の発育状態、成熟度の判定、分娩誘発(妊娠中断)をすべきかどうかを決定することになりますが、これらは母体側、胎児側の状況や妊娠週数などにより個々に決める必要があり、母体の障害の可能性、胎児の胎外生活の可能性、胎児の障害の可能性などを総合的に判断して決めなければなりません。急激な状況悪化の場合には帝王切開術が選択されることがかなりあると言えます。

おたずねの内容から分娩法をどうすべきかをお答えするのは極めて難しいものがあります。現在の担当医に以前の担当医と説明の内容が異なる旨をはっきりと言われて、充分な説明を受けた上で、あなたが現在の担当医の方針に対して同意される必要があります。これをIC(インフォームド・コンセント、説明と同意という意味)と言います。さらにあなたに納得がいかなければ、セカンドオピニオンといって別の医師や別の医療機関の意見を聞いてみたいとおっしゃることができます。医師はIC、セカンドオピニオンの概念は充分に理解していますので、遠慮無くおっしゃってよいと思います。