Mawaru ダイエットと無月経について

近年、女性は肥満を嫌い、ダイエットに対する希望が多くみられるようです。しかも、「短期間にいかにやせて結果を出すか」といった願望はきわめて強く、思春期の女性では肥満を認めないにもかかわらず、理想体重が現在の体重より軽いと答える人が90%以上を占めていると言われています。また、体重減少の方法としては、減食を選ぶ人がほとんどで、減食の方法も摂取する栄養素のバランスを考えない無計画なものが多いようです。

若い女性が急激に体重減少を起こすと月経が無くなることはよく知られています。さまざまな原因でこれまでにあった月経が3ヶ月以上停止したものを「無月経」といいます。この無月経はさまざまな原因で起こりますが、体重の減少が原因と考えられる場合を「体重減少性無月経」といいます。これは以前の体重の10%以上の減少、あるいは5kg以上の減少があり、無月経の状態となったものをいいます。

この「体重減少性無月経」の原因は、頭の中にある「視床下部」という月経や排卵に関係しているホルモン分泌をしている場所に障害がおこると考えられています。体重の回復とともに月経や排卵といった機能が回復することも予想されますが、現実には体重が回復しても無月経が持続するケースが少なくありません。この無月経の状態が長期に続くと、女性ホルモンの分泌の低下が長期にわたるため、皮膚の乾燥、コラーゲン低下による皮下の弾力低下、子宮や卵巣に対する悪影響、骨量低下、膣粘膜萎縮、乳房萎縮、コレステロール上昇、さらには妊孕性の低下など大きな影響が考えられます。

その中でも将来的に重要な問題として骨量低下があります。現在1000万人と推定される骨粗鬆症の患者のうち70~80%が閉経後女性で、今後ますます増加すると予想されています。骨粗鬆症に起因する大腿骨骨折患者は年間8万人。その40%は寝たきりとなり、10~20%は1年以内に骨折が原因で死亡しています。さらに脊椎(せきつい)骨折は大腿骨骨折の3倍とも言われています。関連医療費も膨大で、社会的にも大きな負担となっています。

女性の骨量が最大になるのは30歳前後で、更年期に入ると減少を始め、閉経直後の5年間に10~15%が失われ、60歳代後半以降は再び緩やかに減少します。したがって女性のlife cycleの中で10才代、20才代はしっかりと骨を強くして骨量を上昇させておかなければならない重要な時期といえます。その重要な時期に「体重減少性無月経」が起こると女性ホルモンの分泌低下により、閉経後と同じホルモン状態となり、骨量減少が起こり、骨粗鬆症になる危険性が強まり、その後の骨折につながることが予測されます。無月経、カルシウム摂取不足、運動不足、ダイエットによる栄養のアンバランスなど危険因子を取り去ることが骨量を維持し、閉経後の骨折を予防することにつながります。

体重減少性無月経の治療はホルモン治療により月経を誘発することが必要になります。妊娠を希望されている方では月経を誘発するだけではなく、卵巣から毎月排卵がおきるように排卵誘発も必要となります。今は妊娠を希望していない方でも女性ホルモンの分泌を正常化させることは将来の妊娠、出産、あるいは前に述べたさまざまな女性ホルモン分泌の低下による悪影響、中でも骨粗鬆症の予備状態を改善することになります。

肥満の方がダイエットをされるときは、ご本人の意向としては「なるべく短期間に、なるべく体重減少幅を大きく」と望まれることが多いようですが、現実には長期にわたる管理を必要とする体重減少性無月経を引き起こす可能性があり、さらには将来的な骨粗鬆症につながってしまいます。したがってダイエットをされるときは出来るだけ長期間をかけて、少しずつ徐々に体重を落として行かれるのが理想的といえます。