Mawaru 月経量が多い過多月経、貧血、子宮筋腫について

女性の通常の月経量は50mlから100mlと考えられます。したがって牛乳ビンで言えば1/2以下の量ということになります。ところが種々の疾患によりこれが増大することがあります。女性は毎月月経があるため月経量が多い過多月経の方では500mlあるいはそれ以上となるケースがあります。そうなると毎月貴重な血液が体外へ出ることになるために極端な貧血状態となります。毎月貧血が進行し、気づいたときはヘモグロビンが5g/dl(正常は11.3g/dl以上)以下こともあります。これでは体内に酸素を運ぶ能力が激減し、身体に多大な悪影響を与えます。徐々に貧血が進行した場合ご本人の自覚がないことも多く、極端な貧血状態での労働、スポーツ、家事などで「最近息切れがするようになったが年齢のせいでしょうか?」などと言われることもあります。

それらを引き起こす過多月経の原因としては、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮内膜の異常、子宮内膜ポリープ、ホルモン異常、血液疾患などがありますが、このような場合最も多い原因は子宮筋腫です。初潮後の若年者や閉経前であればホルモン異常のことも多いものです。

子宮筋腫の症状については、過多月経、貧血による息切れやだるさ、腹部腫瘤の自覚が主な症状で、それらのほかに月経痛、腰痛、頻尿、便秘なども子宮筋腫を疑わせる症状と言えます。

子宮筋腫についてご説明しますと、正常の子宮は骨盤内にあり鶏の卵位の大きさで50-100g程度の大きさですが、その子宮の大部分を占める筋肉の部分より発生する良性腫瘍が子宮筋腫です。発生部位と発育方向により、子宮の外側方向、子宮の筋肉内、子宮の内腔方向との3種類があります。このうち子宮の内腔方向へのびた筋腫は粘膜下筋腫と呼ばれ過多月経、鉄欠乏性貧血を引き起こすことが多いものです。

子宮筋腫の頻度はかなり多く、30歳代以上の女性の20%に子宮筋腫があるといわれています。前に述べたような種々の症状がなく、子宮筋腫の大きさが小さい場合は治療の必要はなく、定期的な経過観察でよいと考えられます。すなわちすべての子宮筋腫が治療の必要があるのではなく、その一部が治療の対象となるわけです。また、子宮筋腫と子宮がんは全く関連性はありません。子宮筋腫の悪性型としては子宮肉腫がありますが、子宮がんよりぐっと少ない頻度となります。

子宮筋腫の診断法としては(1)内診、(2)超音波検査、(3)血液検査が主体となり、補助的に子宮内膜細胞診、MRI、CT、子宮鏡などが行われることもあります。

子宮筋腫の治療方針について

(1)治療が必要と認められた場合、現在、ほぼ完治が見込めるといえるほど効果的な薬物療法はありません。治療方針は、補助的な薬物療法を行いながら経過を観察するか、手術的に摘出するか、また閉経前であれば薬物療法を行いながら閉経まで持たせるいわゆる「逃げ込み療法」の3つがあげられます。

(2)注意を必要とすることとして急速に増大し、通常の子宮筋腫とは異なるものもわずかにあり、その場合子宮肉腫であることもありえますが手術前の正確な診断は極めて困難と言えます。

(3)手術の方法としては、子宮全摘術、筋腫部分だけを摘出し正常の子宮を残す子宮筋腫核出術の2種類があります。子宮全摘術を行えば完治し月経もなくなります。その子宮全摘術を行う方法として、開腹して摘出する腹式、腹部に傷のつかない膣式、また腹腔鏡を補助的に使う方法があります。子宮を摘出しても、卵巣を摘出するのではないため、更年期症状が出現したり、エストロジェン低下による各種の身体変化も起こりません。もちろん膣にも変化は起こりません。挙児希望のある婦人には正常の子宮部分を残して、子宮筋腫部分だけ摘出する子宮筋腫核出術を行います。この場合は月経も起こり、妊娠も可能となります。

(4)患者さんに対しては、将来挙児希望のある婦人にはその方の家族計画を伺い、それにそって「治療の必要があるかないか」、「治療の必要があるとすればいつ頃どのような治療法となるか」を十分に説明することになります。

( 5)一般的な手術の適応は「巨大な子宮筋腫」、「過多月経があり貧血治療を繰り返している場合」、「下腹痛や月経痛が強い場合」、「膀胱や直腸の症状が強い場合」などがあげられます。

( 6)手術をする場合、通常は2週間前後の入院が必要となります。現在では疼痛管理が進み、手術中、手術後の痛みを感じることはなくなりました。