Mawaru 経口避妊薬「低用量ピル」の話

ピルほど世界の文化にインパクトを与えた薬剤はないと思います。ピルによって女性は初めて自分の妊娠時期をほぼ確実に自分でコントロールできるようになりました。恐らく薬の中で最も広く使われ、副作用などについても最も研究されている薬剤といえるでしょう。欧米では低用量経口避妊薬(ピル)の服用者はずいぶんと多く、国によっては妊娠可能な女性の2人に1人またはそれ以上の率で広く受け入れられています。日本では長年の治験、審査を経て平成11年6月2日に厚生省は初めて避妊を目的としたピルを承認しました。この低用量ピルは避妊のための排卵抑制に必要な最小限のホルモン量とし、副作用の発現を極力抑えた薬剤です。

平成11年9月2日に発売が開始された低用量ピルは含まれているホルモンの種類や服用日によって段階的にホルモン量を変化させているものなど大きく分けて6種類あります。このうちどれを選択するかは難しい話になるのですが、個々の女性それぞれにあった製品を選ぶことができます。

避妊効果については理想的に服用した場合の妊娠率は0.1%以下とされています。したがって極めて高い避妊効果と言えますが、必ずしも100%の効果があるわけではないことと、飲み忘れや飲む時間のずれなどによっては妊娠率が増加する点については注意が必要でしょう。また、服用中止によってほぼ3ヶ月以内に排卵が再開しますので、妊娠希望となった場合にも十分に対応できます。

副作用としてあげられているものを列挙しますと、血栓症、心血管障害、脳血管障害、乳がん、子宮頚がん、良性肝腫瘍などのリスクが上昇するとされていますが、実際にはわずかに増加する血栓症と乳がん以外の副作用は認められないとする報告もあります。自覚的なものとしては、むかつき、嘔吐、頭痛、乳房痛、不正出血などが報告されていますが、服用開始から3ヶ月ほどすると消失することが多いといわれています。自覚的副作用が持続する場合には、前に述べた6種類のピルの中でご自分に最も合うものを選ぶことによってこれらの副作用はある程度回避することも可能です。ピルによる体重増加を心配される方が多いのですが、現在の低用量ピルでは体重増加が起こることはありませんのでご安心下さい。

副効用といってピルを飲むことによっての利点もあります。貧血、良性乳房疾患、骨盤内感染症、子宮外妊娠、良性卵巣腫瘍、子宮体がん、卵巣がんなどのリスクが下がることが報告されています。また、月経量も減少し、月経痛がほとんどなくなる、月経不順がなくなり規則的になる、にきびや多毛の治療にもなる、骨密度の上昇、閉経期前後の更年期障害の低減も大きなメリットと言えます。

ピル投与の実際はまず問診によって服用禁忌の有無を判定し、検査項目を決定します。身長、体重、月経歴、妊娠分娩歴、避妊歴、既往歴、家族歴、嗜好品などをお聞きし、ピルの危険因子である静脈炎、血栓・塞栓症、ホルモン依存性腫瘍、高脂血症、内分泌疾患、肝臓・胆嚢疾患、喫煙者、高血圧症、肥満などの程度によってはピル以外の避妊法をお勧めする場合もあります。またピル以外の別の薬剤を常用している方についてはピルによってその薬剤の作用が増強、減弱されることや、また常用薬剤によってピルの効果が減弱したり副作用が増強する可能性もあります。

ピル投与前の検査としては血液検査、内診、子宮がん検査、乳房検査、性行為感染症検査などを行うことと、もちろん妊娠されていないことの確認も必要です。

実際の服用方法は開始第一周期目は月経開始初日から飲む方法と月経開始後の最初の日曜日から飲む方法(これによって結果的に週末に月経になるのを避けることができることと7日分がカレンダーの1行となるので服用日がわかりやすいというメリットがある)とがあります。21日間飲み終えるとセブンデイズ・インターバルといって7日間休みその翌日の8日目からまた飲み始めるわけですが、実際に21日間飲んで7日間休むタイプとプラセボ(偽薬)を7錠加えて28日分として休まずに毎日服用するタイプの2種類があります。