Mawaru 子宮頚部異形成、子宮頚がんについて

子宮がんは子宮の入口にできる子宮頚がんと子宮の奥にできる子宮体がんに分けられます。日本では子宮がんの約80%を子宮頚がんがしめています。この子宮頚がんはHPV(ヒト乳頭腫ウィルス)というウィルスによって引き起こされるという考えが一般的です。このウィルスは性行為によって感染することが多く若年女性でも例外ではありません。子宮がん検診が行われることが一般的となり、進行した子宮頚がんを発見することは最近では少なくなってきましが、逆に若い女性(20代)の子宮頚がんやその前がん病変は以前に比べて増加しています。子宮頚がんの危険群として以下のものがあげられています。

 (1) 妊娠・出産回数が多い

 (2) 早婚

 (3) 性交渉開始年齢が低い

 (4) 性交渉相手が多い

子宮頚がんはその自然史がかなり明らかにされたがんと言えます。正常からいきなり子宮頚がんが発生するものではなく、子宮頚部にまず異形成と呼ばれる前がん状態が発生します。その異形成は(1)軽度異形成、(2)中等度異形成、(3)高度異形成の3つの状態に分類されています。これらの異形成の症状としては接触出血を訴えられるケースもありますが、多くの症例が無症状です。さらに進行してゆくとやがて子宮頚部粘膜内だけにとどまった子宮頚部上皮内がん(0期がん)となります。高度異形成から上皮内がんまで進む期間は一定ではありませんが、2年から4年程度と推定されています。さらには浸潤がんとなり、粘膜内からさらに深く進展するとⅠ期、子宮頚部を越えるとⅡ期、骨盤底まで進むとⅢ期、膀胱や直腸への浸潤や小骨盤腔を越えるとⅣ期となります。

前に述べた異形成についてはいったん軽度異形成の状態となれば、中等度異形成→高度異形成→子宮頚部上皮内がんといった方向へ必ず進むものかどうかは現在のところ研究者によって意見が分かれていますが、多くの意見は必ずしも全例ががんになるのではなく、異形成の状態がつづいたり、また異形成から正常に復帰することもありうるとの見解のようです。

子宮頚部異形成、子宮頚がんの診断については以下の検査法によります。

 (1) 子宮の入口の細胞を拭い取る細胞診

 (2) 子宮の入口を拡大鏡で観察するコルポスコープ診

 (3) (1)や(2)で異常が見られた場合は子宮の入口の一部を試験切除して行う組織検査

これらの検査法の中で(1)と(2)はスクリーニン検査として用いられ、(3)の組織検査で確定診断となります。また、これらの検査はきわめて短時間に済み、痛みもありません。

前に述べたように必ずしも異形成が全例進行してがんになるとは限らないので、一般的には軽度異形成は3~6ヶ月おきの検査、中等度異形成は3ヶ月おきの検査とすることが多いと思います。しかし、高度異形成については上皮内がん(0期がん)との区別が難しいこともあり、円錐切除といって子宮頚部を円錐状にリンゴの芯をくりぬくように切りとる手術やレーザーによる焼灼が行われることが多いようです。この円錐切除やレーザー焼灼を行った場合は月経も通常通りあり、もちろん妊娠や出産も可能です。